第一勢 懶扎衣

<原文>
懶扎衣出門架子
変下勢霎歩単鞭
対敵若無膽向先
空自眼明手便
<読み下し>
懶扎衣(らんさつい)は、出門(しゅつもん)の架子(かし)なり。
下勢(かせい)・霎歩(しょうほ)・単鞭(たんべん)に変化す。
敵に対し膽無(たんむ)にして、先に向うが若(ごと)し。
自らを空しくすれば、目は明らかにして、手は便(べん)なり。
<意訳>
懶扎衣(らんさつい)とは、懶(ものうげに)扎衣(うわぎ)を脱ぐ意味です。即ち、無構えの出門の架子(かまえ)であり、北派少林拳と近似しています。
下勢(かせい=第九勢 下挿勢)・霎歩(しょうほ=第十三勢 一霎歩)・単鞭(たんべん=第二十四勢 一條鞭)等への技に変化させます。
敵に対して、膽無にして(無念無想になって)、先に向う心地が大切で、自分を空となることで、目は明らか(視界が開き)となり、手は便(柔軟にして、あらゆる技に変化)にできると説いています。
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『紀效新書』(十八巻本1560年、十四巻本1584年)

著者の戚継光(1528~1588)は、明代の有名な将軍で、山東の蓬莱の出身です。代々の軍人の家に生まれました。勤勉に武芸を練習し、兵法を深く理解し、南では倭寇を防ぎ、北では辺境を安定させ、軍事に関わる一生で、みずから多くの戦いを経験しました。彼の編成した「戚家軍」や彼が1584年(万暦12)に著した兵書『紀効新書』は、天下にその名を響かせました。『紀効新書』は、軍事訓練を主要な内容とした著名な兵書です。拳法の効用を積極的に認め、軍隊強化の基礎訓練にこれを採用しました。『紀効新書』の主旨は、作者が自序のなかで指摘しているように、「そもそも『紀効』というのは、机上の空論ではないということで、『新書』というのは、それが原則から出発しているが、原則にとらわれてなく、臨機応変のものである。」というもので、さらに「兵士を訓練するのに使った決まりごとを集め、みずから民間から兵士を選抜することから、号令・戦法・行営・武芸・守哨・水戦に至るまで、その実用的で有効なものを選んで教練を分別し、順序だてて、それぞれ一巻としてこれを全軍に学習させた。」とも言っています。本書は実践をメインとしており、花仮虚套(見た目だけが華やかで実用性のない技法)を退けて、先人の兵法を吸収して書き上げ、理論と実践が一致することを重視しています。『紀効新書』は、当時の訓練の主要な教材の一つであり、今なお、現代中国軍の兵士訓練においても多大な影響を及ぼし続けていることからも解ります。『紀効新書』には、十八巻本(通行本)と十四巻本の二冊が現存しています。『紀効新書』十八巻本は、戚継光が明の嘉靖三十九年(1560年)前後に、浙江で参将に任じられたとき、寧波・紹興・台州・金華・厳州の各所を分かれて守り、兵士を訓練して倭寇に抗戦したときに作ったものです。全十八巻のうち一巻を「拳経(けんけい)」にあて、各門派の技法から選んだ三十二勢法の図を載せています。
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